赤星建築都市設計研究所は熊本を起点に住宅・店舗・リフォームから各種建築施設や街づくりまで広く設計デザインしています

極 望 庵
〜趣味を楽しむ終の棲家。OMソーラーで夏は採涼、冬は床暖房〜

 この住宅は、子育てが一段落したご夫婦が、奥さんのご実家敷地内の隣りに建てられた終の棲家です。旦那さんはアマチュア無線やサイクリング、奥さんは料理や書道と多彩な趣味を持つお二人が、豊かなセカンドライフを楽しもうと建てられたのがこの「極望庵」です。

 外観は、金属と窯業の2種類のサイディングで各パーツを関係付けスマートに仕上げています。南側の大きく出た軒は、強い日差しや雨を和らげてくれます。

室内は、構造的な工夫によるゆとりある空間演出と、自然素材を随所に使用した心地よい空間になっています。さらに居心地を高めているのが、自然エネルギーを活用し、夏は採涼換気でより涼しく、冬は太陽熱で家中を床暖房、春から秋は太陽熱で給湯も出来るOMソーラーシステムです。

 また、使用されている建材はすべて県産材で、その一部は(社)熊本県木材協会連合会から抽選でプレゼントされたものです。



 道路側東外観も、金属と窯業の2種類のサイディングで各パーツを関係付け、玄関扉やサッシの色などもコーディネートしています。

 また、屋根の形状は、厳しい東側道路斜線とソーラーパネルの南面設置に合わせてデザインしています。

 北側の陸屋根に設置された旦那さんのアマチュア無線用アンテナは、設計当初から本体設置位置や固定金具位置を検討して構造補強しています。

 アンテナの組み立て設置は、DIYによりご夫婦と当研究所で行いました。(ブログ参照) 敷地境界のフェンスや伸縮ゲートは、以前使用してた既存品を再利用しています。



 玄関は土間を斜めにして奥行きを作り、2台分の自転車用駐輪スペースを設けています。

 玄関ホールは写真や絵画を飾るギャラリーを兼ねており、ピクチャーレールが埋め込まれています。

 

 天井には、奥さんが制作した手作りステンドグラスがはめ込まれ、玄関ホールを程良くライトアップしています。

 また、各建具扉にもステンドグラスと同じ、菱形の明かり窓が設けられています。玄関ホールの扉や収納家具は、全て同じタモ材で統一されています。



 吹抜けのある明るく開放的なリビングには、収納と一体化した軽やかな鉄骨螺旋階段と、大きなトップサイドライト、人が集える一枚板のテーブルがあります。

 床は、杉板(t=15)を圧熱処理し木目が少し浮き出ており、自然の感触が足に伝わるようになっています。

その仕上げ塗装はDIYにより、当研究所と現場監督さんで自然塗料を塗って仕上げました。

 そして、壁は一見モダンに仕上げてあるように見えますが、昔ながらの自然素材である藁スサ入りの珪藻土で仕上げています。

 テーブルの脚の色と螺旋階段の色は同色系でご夫妻と決めました。

 また、階段の上部には灯台のような照明が取り付けられています。 階段下収納の扉は市松模様になっていて、一目では扉とは分からないようなデザインにしています。


 その扉も、廊下側、キッチンカウンター側、リビング側からの3方向から用途に合わせて利用出来ます。

 収納の高さは、掃除機の収納サイズに合わせて造作されています。また、階段板下にも引出し収納を設けています。



 キッチン前の3本柱は構造的に梁を支えながら緩やかに視線を遮っています。キッチンと続きのサービスカウンターには電話やFAXを置いたり、日常の必需品を置けるスペースになっています。

 居間に入ってすぐ左手のパーテーションは、螺旋階段の手摺と階段下収納の扉になっていて、和室との視線を遮れるよう配慮しています。

 ダイニングテーブルは、ご夫妻自ら探された久留米の家具工房アンバーに天然一枚板で製作して頂きました。その周りにお気に入りの不揃いの椅子達が囲んでいます。
 ダイニングテーブルのライティングは、吹抜けに張り出せる配線ダクトを使用し、ペンダント照明の位置や数を変更できるように計画してあります。


 扉を開けるとLDKと一体となる和室は、落ち着いた雰囲気でご両親やお客様にも対応できます。

 リビングと和室を仕切る扉にも工夫がされており、リビング側がタモ材、和室側が襖、それぞれの部屋に合わせた仕上げになっています。

 畳表も県産材同様、(社)熊本県木材協会連合会からプレゼントされたものを使用しています。


 システムキッチンは、料理が趣味の奥さんがパナソニックの新発売された3連ガスコンロを選ばれました。引出し面とサイドは木目調で、背面のキッチンボードも同じ木目調で統一しています。

 リビング・廊下と同じ杉の無垢板で続いているトイレは、明るく快適で、床暖房も入っています。また、ペーパーボックスやタオル掛けの位置や高さも、ご夫婦との打ち合わせにより決めました。

 さらに夏の居住性を高めるため、自然エネルギー利用の採涼換気システム「DOMAくーる」をキッチンボード下に設置し、床下の冷気を利用してより涼しく快適に過ごすことができます。

 もう1つのOMソーラーシステムは、太陽熱により冬は家中を床暖房、春から秋は給湯も出来る省エネシステムです。1階の居間やキッチンはもちろん、トイレや廊下・洗面所にも温風の吹き出し口が設置してあり写真で確認できます。 


 北西に位置する洗面所と浴室はなるべく明るく光が射し込むよう窓をとり、清潔感溢れる白で統一しています。 洗面所・浴室には床暖房も効いていて、寒暖差をできるだけ少なくしています。 さらに浴室には、オーディオシステムが搭載されたユニットバスを設置していて、好きな音楽やラジオを高音質で入浴しながら楽しむことができます。また、暖房乾燥換気扇を設けてあり、梅雨や夏の湿気の多い時季をより快適に過ごすことができます。


 視線を曖昧にしている3本柱は、キッチンカウンターと南側窓の2ヶ所にあり、構造とデザインを兼ね備えた工夫です。

 風にゆれる籐のハンギングチェアは1957年、デンマークのデザイナーが設計した卵型チェアです。配置は、設計当初から計画されており、位置を現場で綿密に打ち合わせしました。

 また、1階・2階の全ての床仕上げ塗装はDIYにより、当研究所の2人と現場監督さんの3人で自然塗料(バトン)を塗って仕上げました。

 住み手と最も直接触れ合う床だからこそ「丈夫で心地良いものを」と考えています。



 南側の窓にある3本柱は、構造的に梁を支え、筋交い壁を設けずに大きな開口が得られ、4連窓の外付サッシを付けて、より多くの採光と通風をとることができます。

 上部トップサイドライトにも列柱を設けて屋根を支え、壁は構造用合板で補強しています。 3本柱や列柱など内部・外部共に、統一感を出すデザインになっています。


 2階には、吹抜けに面した寝室があり、窓から1階が見渡せます。北側には、東からアマチュア無線室、納戸、トイレ、書道室が並んでいます。

 螺旋階段を上がって廊下を進むと突当りにニッチが設けてあり、来客確認用のドアホンも併設しています。ニッチの前の床は、一部強化ガラス張りで、玄関ホールのステンドグラス照明と同じ位置にあり、2階廊下側もライトアップされる仕組みになっています。
 廊下には小屋裏へ続く収納階段があり、小屋裏にあるOMソーラーの機械設備をメンテナンスできます。

 さらに小屋裏には窓があり、屋上へ出られます。屋上からは辺りが見渡せ、中央には、高さ5mの無線用アンテナをDIYで設置しました。 北東側の旦那さんのアマチュア無線室は、コンパクトなスペースにエアコンがスッキリ納まる収納、ご自身による無線機器用の配線設備が施工済みです。奥に見える南側の寝室扉まで開けると、奥行きのある空間になります。


 テラスへ開く奥さんの書道室は、ゆったりと自然を感じられる空間になっています。

 窓辺に設けた床の間風の段上がりは、テラスの防水の立ち上がりによる段差を和らげ、テラスとの連続性を高め、季節の移ろいを感じながら安らげる場を演出しています。

 また、室内には、書や絵画を飾るためのピクチャーレールが設置されています。  書道室に面したテラスは、光が射し込み風が吹き抜け、開放感を与えると同時に、隣に住むご両親とのプライバシーも確保しています。

 テラスの屋根はベンチにもなっていて、これから気持ち良い屋上庭園を造って頂きたいと願っています。
そこには、将来の屋上緑化用給排水設備も施工済みです。

 住み手と最も直接触れ合う床だからこそ「丈夫で心地良いものを」と考えています。




主要用途   専用住宅
工期   平成 23年 2月 14日〜
平成 23年 7月 23日
構造形式   木造 地上2階
     
主要仕上 1F 床:杉板フローリング 圧熱処理
自然塗料バトン仕上(DIY)
壁:藁スサ入珪藻土+機能性クロス貼
天井:機能性クロス貼+化粧用合板
  2F

床:杉板フローリング 圧熱処理
自然塗料バトン仕上(DIY)
壁:機能性クロス貼
天井:機能性クロス貼

床面積 1F 64.05u (19.4坪)
  2F 52.03u (15.7坪)
    車庫 14.89u ( 4.5坪)
  116.08u (35.1坪)


極望庵 施工方式

 一括工事発注契約は3社からお見積りして頂き、最終的にユーホームさんに決まり、本体工事とOMソーラーシステム工事を一緒に施工して頂きました。また、この工事では、鉄骨螺旋階段、システムキッチン、ダイニングテーブル、カーテンブラインドなどを分離発注しました。
 鉄骨螺旋階段は、鉄骨屋さんと細かな打合せをして、工場での製作中も作業に立ち会いながら加工しました。現場での設置は、家の屋根を架ける前に、クレーンで吊り上げ据え付けました。

 システムキッチンは、料理が趣味の奥さんが火力の強い3連のガスコンロが新発売されたパナソニックのシステムキッチンを選ばれました。 一枚板の大きなダイニングテーブルは、久留米で天然木のテーブルや木の家具を製作販売する工房Amber「アンバー」で、特別に注文されました。 カーテンブラインドはAMBIENCEの商品で、採光量を細かく調整できるスクロール式等を取付けています。 旦那さんのアマチュア無線用アンテナはDIYにより、ご夫婦と当研究所で組立て設置を行いました。また、1・2階の床も全て、DIYにより自然塗料を塗っています。



くまもと家づくりの本 vol.17 平成23年9月16日発行掲載



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