赤星建築都市設計研究所は熊本を起点に住宅・店舗・リフォームから各種建築施設や街づくりまで広く設計デザインしています

下通新天街

 

 Gate Design




熊本市で最も通行量の多い中心市街地に位置する下通新天街アーケード(昭和62年完成幅15m、天井高10m、全長約150m)は、老朽化が進み、雨漏り等の問題が深刻化していた。そこで、来街者の利便性の向上を図るために早急な整備が必要となり、TMO計画※1として改修工事が決まった。この改修事業は、その規模を抑えるために、基礎、柱、梁等の主要構造部を補強して残しながら改装する再生整備である。

正面ゲートは、熊本の街の顔ともいえる下通新天街の入口部分を多面体のガラス張りとし、日中は街並を映し込み、夜になるとLED照明の光が灯され街並に浮び上がる。その変化は、熊本城を望む通町筋において一層豊かな表情となり、更に季節やイベントに合わせて呼吸するような照明計画により街並の活気が自然と息づく。
  ※1:TMO計画 中小小売商業高度化事業計画。アーケードは、公共的性格の強い共同施設を設置する中心市街地商店街整備計画に含まれ、「平成17年度魅力ある商店街づくり施設整備事業」として補助金の交付を受けた。




   Top Light Design  

既存アーケードのトップライトは平坦なトラス状であった為、谷部に雨が集まることで劣化し、雨漏りの原因となっていた。出来るだけ水勾配をとるためには屋根の高さが必要である。しかし、屋根の高さを優先すると、消防用梯子車に支障をきたす。よって、水勾配がとれ、且つ、梯子車に支障をきたさない方法として、円型2段階開閉方式が考えられた。

この開閉方式は日本でも他に類を見ず、水勾配と強度を兼ね備えた構造を持ち、高さも2.5m高くなりダイナミックに広がった。

トップライトは南北に連続するアーケードの見せ場であり、昼間は美しい構造美を見せ、夜間は呼吸するようなイルミネーションによりライトアップされている。あわせて、柱に復活させた外灯と共に、人が集うコミュニティモールとしての街並みを演出する。





 Atrium Design


街区毎に1カ所ずつ設けられたアトリウム空間は、2スパンつづきのトップライトで覆われ、来街者の集うコミュニティスペースとなっており、季節ごとのイベントに新たな舞台演出を可能にした。
アーケード改修整備にあわせて下通新天街のロゴデザイン及びマスコットを募集した。このコンペを通じて全国の方々に熊本市の中心市街地である「下通新天街」のリニューアルを知ってもらい、熊本県内の方々には地元に対する思いをデザインしていただき、一緒に街づくりを行えればとの思いから計画された。作品は、美術館、市役所等の公共施設や教育機関へのポスター配布、公募雑誌での全国に向けた公募の結果、プロアマ問わず379点が寄せられた。その中から最優秀賞に選ばれた作品が、ゲート内部サインや床の銘盤、ピクト案内板、ストリート案内板等、各所に使用されている。また、ロゴデザインコンペティション応募作品展がアーケード南側アトリウム空間で行われた際は、来街者の多くが足を止め、作品に目を向けていた。


二番街との間にストリート案内板が設置されている。三年坂通り、城見町通りと下通が交わる所で、四方向を案内する方向指示があり、来街者の手助けとなる。また、アナログ時計、デジタルカレンダーが設置され、待ち合わせ場所としても人が集まる。

【東】国道3号線【西】市役所・熊本城【南】サンロード新市街【北】通町筋・上通




 Universal Design
行政も進めるユニバーサルデザインの取り組みは、ユニバーサルデザイン案内板やストリート案内板等に盛り込まれている。今後、このアーケードをきっかけにユニバーサルデザインを商店街各店舗でも導入して行く方針である。

【ユニバーサルデザイン案内板】
 ユニバーサルデザイン案内板とは、点字付き2ヵ国語表記の周辺地図で、下通新天街の両端の柱2ヶ所に設置されている。よく道を聞かれるという商店街の方々と協議を重ね、主要観光地、ホテル、駐車場、公衆トイレ等の情報が盛り込まれており、来街者や観光客に判り易いデザインになった。

【銘盤】
 ゲート下、三年坂通りとの交差部、市庁舎通りとの交差部に、計6枚の銘盤を設置した。銘盤はその先にある対象地が2カ国語表記で記されており、併せて、そこまでの距離も記されている。床デザインのアクセントになるとともに、来街者に対して位置情報を与える。

【床タイルデザイン】
 床舗装のデザインにおいては、部分的に森と大地を抽象化したパターンを新たに施し、既存の無機的なパターンとのリズミカルな表現で、来街者に視覚的に距離感を認知させる。



日経アーキテクチュア特別編集版 美しい屋根 2006年秋号




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